将棋の8大タイトルの中で最も古いのが名人で江戸時代からあるんですね。
江戸時代の名人は世襲制で名人三家(大橋家本家、大橋家分家、伊藤家)の中から選ばれていました。
明治時代になると世襲制はなくなったものの、現在のタイトル戦のように実力で名人を決めるのではなく、周りから認められたものが名乗ることのできる名誉称号のようなものでした。
実力で名人位を決めるようになったのは昭和になってから。
以降はタイトルとして名人位を争うようになりました。
世襲制 | 襲名 | 名前 | よみ | 名人三家 |
---|---|---|---|---|
一世名人 | 1612年 | 大橋宗桂(初代) | おおはし そうけい | 大橋家(本家) |
二世名人 | 1634年 | 大橋宗古(二代) | おおはし そうこ | 大橋家(本家) |
三世名人 | 1654年 | 伊藤宗看(初代) | いとう そうかん | 伊藤家 |
四世名人 | 1691年 | 大橋宗桂(五代) | おおはし そうけい | 大橋家(本家) |
五世名人 | 1713年 | 伊藤宗印(二代) | いとう そういん | 伊藤家 |
六世名人 | 1723年 | 大橋宗与(三代) | おおはし そうよ | 大橋分家 |
七世名人 | 1728年 | 伊藤宗看(三代) | いとう そうかん | 伊藤家 |
八世名人 | 1789年 | 大橋宗桂(九代) | おおはし そうけい | 大橋家(本家) |
九世名人 | 1799年 | 大橋宗英(六代) | おおはし そうえい | 大橋分家 |
十世名人 | 1825年 | 伊藤宗看(六代) | いとう そうかん | 伊藤家 |
十世名人は1843年までで、1844〜1878年は名人空位。
名誉職 | 襲名 | 名前 | よみ | 備考 |
---|---|---|---|---|
十一世名人 | 1879年 | 伊藤宗印(八代) | いとうそういん | |
十二世名人 | 1898年 | 小野五平 | おの ごへい | |
十三世名人 | 1921年 | 関根金次郎 | せきね きんじろう | 弟子は木村義雄 |
実力制 | 就位 | 名前 | よみ | 永世称号 |
---|---|---|---|---|
第一代 | 1938年 | 木村義雄 | きむら よしお | 十四世名人 |
第二代 | 1947年 | 塚田正夫 | つかだ まさお | |
第三代 | 1952年 | 大山康晴 | おおやま やすはる | 十五世名人 |
第四代 | 1957年 | 升田幸三 | ますだ こうぞう | |
第五代 | 1972年 | 中原誠 | なかはら まこと | 十六世名人 |
第六代 | 1982年 | 加藤一二三 | かとう ひふみ | |
第七代 | 1983年 | 谷川浩司 | たにがわ こうじ | 十七世名人 |
第八代 | 1993年 | 米長邦雄 | よねなが くにお | |
第九代 | 1994年 | 羽生善治 | はぶ よしはる | 十九世名人資格者 |
第十代 | 1998年 | 佐藤康光 | さとう やすみつ | |
第十一代 | 2000年 | 丸山忠久 | まるやま ただひさ | |
第十二代 | 2002年 | 森内俊之 | もりうち としゆき | 十八世名人資格者 |
第十三代 | 2016年 | 佐藤天彦 | さとう あまひこ | |
第十四代 | 2019年 | 豊島将之 | とよしま まさゆき | |
第十五代 | 2020年 | 渡辺明 | わたなべ あきら | |
第十六代 | 2023年 | 藤井聡太 | ふじい そうた |
永世称号は名人位を通算で5期以上保持すると与えられるものです。
現役棋士で名人位を獲得したことのある棋士は9名です。
羽生善治九段と森内俊之九段では名人位を先に獲得したのは羽生九段ですが、永世名人の資格(通算で5期以上)を先に得たのは森内九段でした。
実力制となってから2023年までで81期あり(1977年のみ主催者変更問題があり行われず)、この間の名人位獲得期数ランキングはこうなっています。
棋士 | 通算期数 | 最多連続期数 | 備考 | |
---|---|---|---|---|
1位 | 大山康晴 | 18 | 13 | 初獲得からストレートで永世資格も取得 |
2位 | 中原 誠 | 15 | 9 | 初獲得からストレートで永世資格も取得 |
3位 | 羽生善治 | 9 | 3 | |
4位 | 木村義雄 | 8 | 5 | 初獲得からストレートで永世資格も取得 |
4位 | 森内俊之 | 8 | 4 |
羽生九段は連続3期が最多というのはちょっと以外。
このランキングにいずれ「藤井聡太」が入ってくるでしょうね。
現役棋士での名人経験者は現名人の藤井聡太(2023)のほかに、渡辺明(2022〜2020)、豊島将之(2019)、佐藤天彦(2018〜2016)、羽生善治(2015〜2014,2010〜2008,2003,1996〜94)、森内俊之(2013〜2011,2007〜2004,2002)、丸山忠久(2001〜2000)、佐藤康光(1999〜1998)、谷川浩司(1997,1989〜1988,1984〜1983)の9名です。
現役時代の故人の功績をたたえて贈られるのが「贈名人」と「名誉名人」です。
贈名人 | 伊藤看寿 | いとうかんじゅ | 1719-1760 | 詰将棋「将棋図巧」で有名 |
---|---|---|---|---|
贈名人 | 坂田三吉 | さかた さんきち | 1870-1946 | 戯曲「王将」(後に映画化)のモデル |
名誉名人 | 小菅剣之助 | こすげ けんのすけ | 1865-1944 | 神田事件(将棋界分裂の危機)で仲裁に尽力 |
名誉名人 | 土居市太郎 | どい いちたろう | 1887-1973 | 実力制になる直前の第一人者 |
世襲制の時代だったため名人になることができなかったものの、その棋力から実力十三段と言われるのが天野宗歩(あまの そうほ/そうふ)です。活躍したのは江戸時代末期。正式な段位は七段ですが、ホントはその2倍近くの強さがあるといった意味も含めて「実力十三段」と言われていました。
また、「棋聖」ともよばれ、ここからタイトルの棋聖戦の名称が採用されました。
藤井聡太八冠が初めて獲得したタイトルが「棋聖」です。
藤井八冠も実力十三段と呼ばれるまでになるか、今後に注目しましょう。