戦型、仕掛け局面に着目した観戦記です(2017年王座戦第1局)

戦型観戦記(2017年王座戦第1局 羽生vs中村)

2012年から5期連続で王座となっている羽生善治三冠に中村太地六段が挑戦することになったのが2017年の王座戦です。

 

この2人は2013年の王座戦でも戦っており、そのときは3勝2敗で羽生王座が防衛しています。中村六段は第3局まで2勝1敗とタイトル獲得にあと1勝となりながら惜敗。

 

リベンジマッチともいえる組み合わせとなりました。
2017年の第1局が行われたのは9月5日(火)。

 

今回はこの1局の戦型仕掛け局面に着目してみました。
なお、王座戦は持ち時間各5時間の1日制です。

 

角換わりを避けた羽生王座

第1局は中村六段の先手番で初手から10手目までの指し手が下記のとおり。

▲中村六段△羽生王座
▲2六歩△8四歩
▲7六歩△3二金
▲7八金△8五歩
▲7七角△3四歩
▲8八銀△4四歩

(第1図までの指し手)

 

角換わりかと思いきや羽生王座が10手目に△4四歩と角道を止めました。
こうして雁木に組んでいくのが流行っているそうです。

 

コンピュータ将棋ソフトにより見直された雁木がタイトル戦でも出るようになったんですね。
羽生王座がどんな差し回しを見せるのか注目したいところです。

 

【第1図】

2017年王座戦第1局

 

羽生王座が中央から仕掛ける

駒組みが進んで、先に仕掛けたのは後手の羽生王座。
30手目の△5五歩で戦いが始まりました(第2図)。

 

6二の銀が立ち遅れてる気がするのですが、このタイミングで行くんですね。
△5五歩以下の狙いは▲同歩△4五歩からの角のさばき。

 

【第1図】

2017年王座戦第1局

 

以下、△5五角で入手した歩を使って8筋から攻めた羽生王座。
6筋の攻めもからめて優勢を築いたのですが…。

 

中村玉をつかまえられず

羽生王座が優勢で局面は進んだものの中村玉が逃走します。
先手玉の指し手だけを並べると次のとおり。()内は何手目か。

 

▲6九玉(23)⇒▲6八玉(77)⇒▲6七玉(79)⇒▲6六玉(83)⇒▲7五玉(87)⇒▲6四玉(109)⇒▲5四玉(113)⇒▲4三玉(117)⇒▲5四玉(121)⇒▲6五玉(123)⇒▲5四玉(135)⇒▲4五玉(139)⇒▲4六玉(141)⇒▲4五玉(165)⇒▲5六玉(171)。

 

見てるだけで目がチカチカしますよね。
結局、中村玉を捕まえることができずに羽生王座が投了

 

【投了図】

2017年王座戦第1局投了図

 

185手目▲1六銀で「受けなし」と判断して投了した羽生王座でしたが、△2三桂で受かっていたことが局後に判明。優勢を築きならが中村玉をつかまえきれなかったことが影響したのかもしれませんね。

 

終局は22時53分。
先手中村六段は125手目で、後手羽生王座は148手目で1分将棋になってました。

 

中村六段の粘り勝ちといった1局でした。

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