羽生竜王と藤井五段の公式戦初対局(朝日杯)の内容を振り返る

羽生竜王と藤井五段の公式戦初対局(朝日杯)の内容を振り返る

羽生竜王と藤井五段の公式戦初対局(朝日杯)の内容を振り返る

羽生竜王と藤井五段の公式戦初対局となった朝日杯将棋オープン戦準決勝を振り返ってみます。

 

羽生竜王が雁木に

振り駒の結果、先手となったのは藤井五段。非公式戦での初対局(炎の七番勝負)と同じ角換わりに進むかと思われましたが、後手の羽生竜王が△4四歩と角道を止めて、雁木に。

 

ちなみに、羽生竜王はタイトル戦(2017年王座戦第1局の対中村太地六段戦)でも、後手番で雁木を採用しています。

 

第1図:△4四歩まで

 

雁木は藤井五段もある程度は予想していたのかもしれませんね。コンピューター将棋によって見直された雁木が二人の公式戦初対局で見られるということに時代を感じます。

 

駒組みが進み、▲4五歩と藤井五段が先に仕掛けます。

 

第2図:▲4五歩まで

 

以下、△同歩▲3三角成△同桂▲2四歩△同歩▲同飛△2三歩▲2九飛と進行。
藤井五段が2筋での歩交換に成功して、好位置に飛車を引きます。

 

対して、羽生竜王は△4四角▲7七角△同角成▲同銀を入れて△7三桂と攻撃態勢に。
ここで藤井五段が指したのが▲1七角

 

第3図:▲1七角まで

羽生竜王対藤井五段戦(朝日杯)

 

以下、△4四角▲同角△同銀としてから、▲1五歩から攻めていきました。△4四同銀とさせたことで、雁木の金銀の連結を外し、4三の地点を空けたのが後で効いてきます。

 

1筋でポイントを稼いだ藤井五段に対し、△7五歩と羽生竜王が反撃。
ここで9分以上考えて藤井五段が指したのが▲6六銀です。

 

朝日杯の持ち時間は40分なので9分はかなりの長考です。

 

第4図:▲6六銀まで

羽生竜王対藤井五段戦(朝日杯)

 

守りの銀ですが、この銀を中央で攻め駒として使っていこうという藤井構想です。
その後の展開でも、▲5五銀左となりました。

 

羽生竜王が8筋で歩を交換し、△8九飛として、藤井五段に手番が回ります。
▲3五歩△同銀▲5五銀左△8八歩▲同金△5五銀としたとことで▲4三歩。

 

第5図:▲4三歩まで

 

5五の銀を取る前に、指した歩が羽生竜王を悩ませます。
△同玉か△同金右か△同金左か。

 

羽生竜王の選択は△4三同金左
2三飛成がありますが、3二の金で歩を取りました。

 

以下、▲5五銀△9九銀▲9八金と進行。
感想戦で羽生竜王は△9九銀でなく△9九角のほうが勝負になったと述べていました。

 

この後、▲2三飛成と龍を作って攻めた藤井五段に対し、羽生玉は△4三玉、△4四玉と中段に逃げます。▲6六角の王手に△5五銀としたのが第6図。

 

第6図:△5五銀まで

羽生竜王対藤井五段戦(朝日杯)

 

ここでスパッと▲同角として、以下△同玉▲5六銀△5四銀▲2二歩成△4三角。
そこで▲7四歩としたのが「冷静でいい手だった」と羽生竜王が認めています。

 

投了図:▲4七桂まで

羽生竜王対藤井五段戦(朝日杯)

 

119手▲4七桂で藤井五段の勝利となりました。
これで藤井五段の決勝進出下決定。

 

決勝は勝利すれば史上最年少での棋戦優勝六段昇段という大一番です。
広瀬八段との決勝戦の対局内容は別ページにまとめる予定です。