神奈川県秦野市の鶴巻温泉にある「元湯・陣屋」が「陣屋事件」で有名となった旅館です。
「陣屋事件」って日本史の教科書にでも出てきそうな名前ですよね。
将棋の歴史で言えば、確かに歴史的な出来事(大事件)です。
昭和27年の王将戦で挑戦者の升田幸三八段が、対局場所の陣屋に着いて、呼び鈴を押したのに誰も出てこなかったことに立腹し、タイトル戦の対局を拒否してしまったというのがあらまし。
コレだけ書くと陣屋の落ち度のようになりますが、真相は違うようです。
当時の王将戦は指し込み制度が導入されていました。
指し込み制度とは、7番勝負でどちらかが3番勝ち越すと、次局が香落ちとなるというもの。第5局までで挑戦者の升田幸三八段が4勝1敗となり、第6局の香落ちが決定していました。
相手は木村義雄14世名人(初代王将)。名人に香車を落とさせるなんて失礼だと感じた升田八段が難癖をつけて対局を拒否したというのが有力な説です。
『強がりが雪に転んで廻り見る』
事件の一ヶ月後に升田八段が陣屋を訪れたときに記した色紙に書かれた言葉です。
ちなみに、この事件をきっかけに陣屋は玄関に陣太鼓を設置したそうです。
訪ねたときに実物を見てみたくなりますね。
元湯・陣屋では最近も将棋のタイトル戦が行われています。
いくつか紹介してみたいと思います。
第5局までで菅井王位の3勝2敗で、ここまでは先手番がすべて勝利。
第5局までの結果がこちら。
(対局者名、左が先手)
本局はカド番となった豊島棋聖の先手番です。
1日目昼食では菅井王位、豊島棋聖とも陣屋特製豚漬け重を注文しました。
豊島棋聖がこの局面で次の手を封じました。聖地巡礼で陣屋に泊りに行くなら、この局面からの展開を予想してみるのもイイかもしれませんね。
対局後の感想で豊島棋聖は封じ手のあたりのことを「難しくてよくわからなかったです。」と答えています。なお、2日目の昼食は二人とも陣屋カレーを注文しています。
中村王座にとっては初の防衛戦、斎藤七段にとっては初のタイトル獲得を目指す対局です。
昼食ではやはり二人ともカレーを注文。
中村王座はチキンカレー、斎藤七段はビーフカレーでした。
陣屋のカレーはタイトル戦の名物料理となっているようですね。
第3局までで羽生二冠の2勝1敗、この対局で羽生二冠が勝利すれば王座復位となる一局です。
この対局では「羽生善治二冠の△6六銀」という伝説の手が飛び出しています。
「羽生 6六銀」とかで検索すると、いろいろ出てきます。
この手が飛び出した舞台が陣屋だったというわけです。
やはり、歴史的な聖地ですね。