藤井聡太八冠の勝率8割ってどのぐらいスゴい?

藤井聡太八冠の勝率8割ってどのぐらいスゴい?

「大山超え」に続いて「中原超え」も視野に

タイトル連続20期獲得の新記録を打ち立てた藤井聡太八冠に、歴代最高勝率超えの可能性が高まってきました。

 

これまでの歴代最高勝率(年度内)は1967年度に中原誠五段(当時)が記録した.855(47勝8敗)です。
今年度の藤井八冠の勝率は3月9日時点で、.863(44勝7敗)。

 

歴代最高勝率超えのチャンスがあります。
タイトル戦を戦っていて、この数字ですからね。とんでもない記録です。

 

ちなみに、藤井八冠が最後に負けたのは朝日杯決勝(2月10日)で相手は永瀬拓矢九段でした。

 

なお、今季は藤井八冠と最高勝率を高いレベルで争っている棋士がいます。藤本渚四段で、.836(46勝9敗)(同3月9日時点)。
藤本四段は2005年生まれの18歳で藤井八冠の3歳下。楽しみな若手が出てきましたね。

 

プロ同士の勝負で勝率8割は異常な数値

勝率8割と聞くと、2割は負けてる=10回に2回は負けてるってことか、ムチャクチャ強いってほどでもないな…なんて考えてしまうかもしれませんが大間違いです。

 

勝ったり負けたりが当たり前のプロ同士の勝負で勝率8割越えというのはとんでもない数字です。

 

「藤井聡太」出現前と出現後の歴代勝率記録ベスト10

日本将棋連盟のサイトに各棋士の年度ごとの成績が掲載されているのですが、この歴代勝率記録(対局数30以上)が「藤井聡太」デビュー前とデビュー後で大きく変わってます。

2016年度まで(藤井聡太前) 2022年度まで(藤井聡太後)
順位 棋士名 勝率 勝−敗 年度 棋士名 勝率 勝−敗 年度
1 中原誠 .855 47−8 1967 中原誠 .855 47−8 1967
2 中村太地 .851 40−7 2011 中村太地 .851 40−7 2011
3 羽生善治 .836 46−9 1995 藤井聡太 .849 45−8 2018
4 木村一基 .836 61−12 2001 藤井聡太 .846 44−8 2020
5 桐山清澄 .826 38−8 1968 羽生善治 .836 46−9 1995
6 近藤正和 .822 37−8 2004 木村一基 .836 61−12 2001
7 中原誠 .821 32−7 1966 藤井聡太 .836 61−12 2017
8 羽生善治 .820 50−11 1987 藤井聡太 .828 53−11 2022
9 大内延介 .818 27−6 1966 桐山清澄 .826 38−8 1968
10 久保利明 .810 34−8 1994 近藤正和 .822 37−8 2004

 

藤井聡太八冠のプロデビューは2016年度ですが、10月にプロ棋士になったので、初年度は対局数が少なく、30局以上の勝率ランキング対象にはなっていません。

 

すでに、歴代最高勝率記録の中に4回も「藤井聡太」が登場してしまってます。

 

ほかの棋士の記録を見てもらえばわかりますが、8割超えというのは何年かに一度、メチャクチャ好調な年(奇跡の一年)に出せる記録というのが普通です。それが、すでに4回。この記録に入っていない年度も8割を超えています。

 

最近の年度勝率1位棋士

2022 藤井聡太 .828(53−11)
2021 伊藤匠 .818(45−10)
2020 藤井聡太 .846(44− 8)
2019 藤井聡太 .815(53−12)
2018 藤井聡太 .849(45− 8)
2017 藤井聡太 .836(61−12)
2016 青嶋未来 .750(42−14)
2015 斎藤慎太郎 .769(40−12)
2014 菅井竜也 .796(43−11)
2013 村山慈明 .767(33−10)
2012 永瀬拓矢 .786(44−12)
2011 中村太地 .851(40− 7)
2010 佐藤天彦 .795(35− 9)
2009 豊島将之 .763(45−14)
2008 宮田敦史 .757(28− 9)
2007 村山慈明 .783(36−10)
2006 糸谷哲郎 .788(26− 7)

藤井聡太八冠の勝率で感覚がマヒしてしまっていますが、勝率8割超えってスゴイことなんです。勝率1位でもなかなか超えません。それをコンスタントに達成している藤井八冠がとんでもないんです。2021年度は勝率1位とはなりませんでしたが、52勝12敗の勝率.812となっています。

 

基本的に年度勝率1位棋士にタイトル戦を戦っているタイトルホルダーが入ることはないのですが、そうした将棋界の常識も「藤井前」と「藤井後」では変わってしまっています。

 

2017年度以降の勝率ランキングトップ3棋士

順位 2022年度 2021年度
1 藤井聡太 .828 53勝11敗 伊藤匠 .818 45勝10敗
2 斎藤明日斗 .813 39勝9敗 藤井聡太 .813 52勝12敗
3 本田奎 .765 39勝12敗 服部慎一郎 .782 43勝12敗
順位 2020年度 2019年度
1 藤井聡太 .846 44勝8敗 藤井聡太 .815 53勝12敗
2 出口若武 .750 33勝11敗 永瀬拓矢 .736 39勝14敗
3 澤田真吾 .750 30勝10敗 渡辺明 .732 41勝15敗
順位 2018年度 2017年度
1 藤井聡太 .849 45勝8敗 藤井聡太 .836 61勝12敗
2 渡辺明 .800 40勝10敗 大橋貴洸 .793 46勝12敗
3 永瀬拓矢 .800 36勝9敗 永瀬拓矢 .764 42勝13敗

勝率1位でなかったのは2021年度のみ。
タイトル戦を戦いながらこの数値というのが驚異的。

 

タイトル戦でも勝率が8割近く

 

プロ野球で勝率8割超えるには年間115勝必要

プロ同士の対戦で勝率8割がどのぐらいスゴいか?勝率で優勝を争うプロ野球で考えてみます。
プロ野球は年間143試合。これで勝率8割超とするには、年間115勝以上必要です。

 

2022年の優勝チームは、セ・リーグのヤクルト80勝、パ・リーグのオリックス76勝。
勝率は、ヤクルト.576、オリックス.539です。

 

勝率8割なんて夢のような数字ですよね。
3連戦2勝1敗ペースでも、勝率.667です。8割に届きません。

 

WBCでの日本代表の通算成績も勝率8割には届かず

WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)での日本代表の通算成績も勝率8割には届きません。
過去5大会で3回優勝している日本代表でも届いていないのです。

 

日本代表のWBCでの通算成績

日本代表の予選リーグも含めたWBCの通算成績は30勝8敗で勝率.789。

結果
第1回 2006年 優勝 5 3
第2回 2009年 優勝 7 2
第3回 2013年 ベスト4 5 2
第4回 2017年 ベスト4 6 1
第5回 2023年 優勝 7 0

 

どんだけ勝ったら、勝率8割になるのか。
とんでもない数字ということがわかりますよね。

 

それをデビュー以来、毎年のように続けているのが藤井聡太八冠というわけです。


2023年度の勝率ランキング

2024年3月8日対局分までの勝率ランキングはこちら。

順位 棋士 勝率
1 藤井聡太竜王・名人(21歳) .863(44勝-7敗)
2 藤本渚四段(18歳) .836(46勝-9敗)
3 八代弥七段(29歳) .783(36勝-10敗)
4 伊藤匠七段(21歳) .750(48勝-16敗)
5 石田直裕五段(35歳) .735(25勝-9敗)

対局数10局以上を対象。