将棋で藤井と言えば少し前までは藤井猛九段のことでした。
いまでは完全に藤井聡太四段のことですよね。
解説などで藤井猛九段が登場するときも「どうも、じゃないほうの藤井です」がツカミになってしまってるほど。そんな藤井九段が作り上げたのが「藤井システム」という戦い方です。
将棋では優秀な戦法などに、棋士の名前がつくことがあるのですが、藤井システムもそのひとつ。ほかに「森下システム」「中原囲い」「米長玉」なんてのもあります。
こうしたものの中でも将棋の戦い方に革命を起こしたと言われるのが「藤井システム」です。
何がそんなにスゴイのでしょうか?
将棋のことを詳しく知らない人にもわかるように解説してみたいと思います。
将棋には戦い方についての格言やセオリーがあります。
このサイトのタイトル「歩のない将棋は負け将棋」もそのひとつ。
ところが、藤井システムはセオリーに反した戦い方なのです。
しかも2つもです。
藤井システムはこの2つのセオリーに反しているのです。
【カンタンに2つの格言を解説】
藤井システムの基本図が下記。
玉は最初の位置のままで、玉と飛車が近づいていますよね。専門的な解説はココでは省略しますが、パッと見では「玉を囲わないで戦う超初心者」のような指し方なのです。
将棋の指し方には特許や独占権はありません。
なので、棋士の名前がついているものでも、ほかの棋士が指すことができます。
「森下システム」「中原囲い」「米長玉」などはいろいろな棋士が指しています。
ところが、藤井システムは当初は他の棋士が指すことがありませんでした。
あまりにも独特な指し方で真似することができなかったのです。
単なる戦法の枠組みを超えていたからかもしれません。
変わった指し方というだけではありません、戦績もバツグン。
第10期竜王戦(1998年度)では、藤井システムを用いた藤井猛六段(当時)が当時の将棋界2トップだった羽生善治と谷川浩司に挑戦者決定戦とタイトル戦で勝利しています。
これにより藤井六段が竜王位を獲得。
また、優れた将棋の戦法に贈られる升田幸三賞も受賞しています。
この升田幸三賞というのは「新手一生(しんていっしょう)」を座右の銘とした人気棋士の升田幸三(故人)にちなんで創設されたものです。
強いだけではプロじゃない、魅せて楽しませてこそプロというのが升田幸三の考え方。
「新手一生」とは、誰も指したことがない新しい指し方に一生を賭けるという意味です。
魅せるだけではありません。升田幸三は実力制4代名人で将棋界の全タイトル(当時は3つ)を初めて独占した棋士でもあります。
その棋士の名にちなんだ賞が升田幸三賞。
毎年、発表されるのですが、藤井システムはその中でも歴代ナンバーワンと言われています。
私の感覚では「じゃないほう」ではなく藤井猛九段こそが将棋界の「藤井」です。
もちろん、藤井聡太四段にも着目しています。
現時点では強さだけに注目が集まっていますが、「藤井聡太」の名がつく指し方が誕生することが楽しみです。そうなると、呼び方はどうなるんでしょうかね?