2017年竜王戦第2局(渡辺竜王対羽生棋聖)は後手番の羽生棋聖が雁木を採用しました。
流行りを採用するというと軽薄な感じもありますが、羽生棋聖の場合は常に最新・最先端を取り入れることで、最善を追及しているように思われます。
どんな戦いとなったのか振り返ってみたいと思います。
渡辺竜王の先手で初手から▲7六歩△8四歩▲2六歩△3二金▲7八金△8五歩▲7七角△3四歩▲8八銀に△4四歩(第1図)と角道を止めて雁木へ。
途中の手順は異なりますが、この局面は今年の9月5日に行われた王座戦第1局(▲中村太地六段対△羽生王座)と同じです。
ちなみに、王座戦は羽生王座の仕掛けが成功し、優勢となったものの決めそこなって中村六段の逆転勝ち(185手)となりました(詳細は戦型観戦記王座戦第1局で)。
羽生棋聖としては負けたものの雁木には手ごたえを感じていたのではないでしょうか。
王座戦では飛車が8筋のまま、△5五歩から仕掛けていきましたが、本局では6筋に飛車を回って、△6五歩と仕掛けました(第2図)。
ここまでで、先手は3七に上がった銀を▲4八銀と引いて、▲3七桂としています。手損ですが、△4五歩で角道を通されることをけん制したもの。
後手は△5一角として7三の桂にヒモをつけてから仕掛けました。
以下、▲同歩△同桂に▲6八銀と引いて▲6六歩の桂取りを見せた先手に対して、羽生棋聖は「敵の打ちたいところに打て」の△6六歩。
ここで封じ手となりました。
2日目に入り、5一の角が△3三角と先手玉をにらむ位置に移動。さらに、△4四角とした後で、3三の地点で後手から桂交換に持っていき、持ち駒となった桂馬も攻めに活用します。
「攻めは飛車角銀桂」が理想と言いますが、本局では持ち駒にした左桂も含めると「飛車角銀桂桂」による攻め。羽生棋聖の攻めが続きます。
矢倉と比較した雁木のメリットとして増田四段が「左桂を活用できること」をあげていますが(将棋世界11月号)、本局もそうした展開となりました。
持ち駒とした桂馬は△6五桂が利いている7七に△7七桂打(66手目)として使っています。
以下、渡辺竜王の反撃もありましたが、羽生棋聖が優勢を保ち128手で投了。
これで羽生棋聖の2連勝。
永世七冠まであと2勝となりました。
第3局は1週間後の11月4日(土)、5日(日)。
渡辺竜王の巻き返しにも期待したいところです。