もはや「ガンギマン」と呼びたくなるぐらい雁木を実戦でも指しまくってるのが深浦康市九段ですよね。先手だろうが後手だろうがガンガン雁木。
そこで、深浦九段の実践譜から雁木の指し方を学んでみたいと思います。
まずは羽生善治棋聖に勝った一局。
2017年10月31日に行われた第3期叡王戦段位別予選九段戦です。
第1図は5筋で先手の羽生棋聖が歩を交換したところ。
一歩を手にした深浦九段が仕掛けます。
第1図以下の指し手。
△8六歩▲同歩△8五歩。
飛車先の継歩攻めは雁木以外でも見られますが、これに角の筋を絡めて戦うのが雁木流。
この局面から数手進んだ第2図をみてください。
気持ちいい攻めができそうな理想図ですよね。
アマチュア同士の戦いなら、この段階で「勝負あり」かもしれません。
プロ同士(特に相手が羽生棋聖)なので、これで優勢というわけではないのですが、この対局は120手で後手の深浦九段が勝利しています。
あたり前ですが雁木だかっらと言って常に勝てるわけではありません。
今後は深浦九段が雁木で敗れた一局を見てみたいと思います。
相手は同じ羽生棋聖。
2017年10月26日に行われた第76期順位戦A級5回戦です。
後手の羽生棋聖は△4四歩を保留。
雁木からの▲4五歩の仕掛けを消しています。
さらに後手なので千日手でもOKの待機策。
と飛車を上下に動かして待機します。
これに対して深浦九段の構想は雁木から穴熊に囲い直すというもの。
ただ、▲9九玉とした瞬間に羽生棋聖が△5五歩と仕掛けました(第4図)。
以下、9筋の端攻めも絡めて羽生棋聖が116手で勝利しました。
矢倉から穴熊に組み直すことはありますが、雁木からはどうなんでしょうか?
自陣にスキがなくバランスのいい雁木(ソフトが評価)から駒が偏っている穴熊(ソフトがあまり評価しない)に組み直すのは相性が良くないのかもしれません。
上の対局では△4四歩保留で▲4五歩の仕掛けができませんでしたが、これを逆用する指し方も深浦九段の実践譜にあります。
相手は渡辺竜王。
2017年9月2日に行われた第38回日本シリーズJTプロ公式戦です。
この対局も後手が△4四歩を保留して▲4五歩の仕掛けを封じていますが、深浦九段はそれを逆用して▲4六角と好位置に角を転換しました。
以下、角のニラミを活かして相手の攻め駒を攻める展開となりました。
こんな指し方もあるんですね。最終的には123手で深浦九段の勝ち。
深浦九段は雁木で渡辺竜王にも羽生棋聖にも勝っているというわけです。
やはり「ガンギマン」ですね。
ちなみに、渡辺竜王対羽生棋聖の2017年竜王戦でも雁木が指されています。
詳しくは別記事を参照⇒2017年竜王戦第2局(後手羽生の雁木)の振り返り。
深浦九段の雁木研究がどこまで進むかにも注目です。